Pauli Ebner
アンティークだったと思う、数年前、その画家のポストカードの数々をウェブ上で眼にしてから、現代物の復刻版ポストカードを集めるようになった。
アンティークポストカードにそれほど興味があるわけではなかったので、それで充分だった。
Pauli Ebner_____1873年ウィーン生まれ。20世紀初頭から1949年に亡くなる何年か前まで、幼い子供や子供の天使などをモチーフに数多くの作品を残した挿絵画家である。
その作風は、牧歌的な丘などで遊ぶ子供達を素朴なタッチで描いた若年期の作品から、背景を無くし赤い服を着た男の子や女の子を際立たせるシンプルなスタイルを取り入れたり、時代を経るごとに作風もモチーフも何度か大きく変化を遂げている。
円熟期には、人形やおもちゃを擬人化して子供と触れ合わせてみたり、幼な子が大勢で大人がするような職種に従事していたり、子供の天使達がパティシエとして甲斐甲斐しくスウィーツを作っていたりと、実に自由自在にその独創的な世界を創り出していた。
人気は欧米のみならず日本でも同様で、アンティークの物はモチーフによっては高値で取引きされる。中でも、クリスマスの作品群はEbnerの一番人気で、日本では20,000円前後の値のついた天使やフェアリーのポストカードもあるくらいだ。
復刻版ポストカードはどれもヨーロッパで印刷された物のようだが、生産国による印刷技術の差が大きく、以前、ある国から取り寄せたものは実物を見てひどく落胆したことがある。
日本で購入した、非常に綺麗な印刷の復刻版も何枚か持ってはいるが、石版印刷という、当時の技術で作られたアンティーク物を一度見てみたいとしだいに思うようになっていった。
そして、そのチャンスは今年の初めに訪れた。
あまり出回っていない、Ebnerのスノーマンのモチーフに以前から惹かれていたのだが、オークションサイトで落札することができた。
和紙のような縁の紙に色も美しく残り、Ebnerの柔らかく繊細なタッチが楽しめる、状態の比較的良い物だ。
子供らしい、色鮮やかな服の色が雪の白によく映えていてとても綺麗だ。
それまで、アンティークポストカードはイギリスの挿絵画家の物を一枚だけ持っていた。
90年前の消印があるが、イギリスの印刷技術や紙は既に現代の技術や質に近かったのか、さほどアンティーク感を感じさせない、状態の良い物である。
それゆえか、積極的に2枚目のアンティークポストカードを買おうというふうにはならなかった。
だが、石版印刷と言われるEbnerのカードを手にしてみると、復刻版の物が何枚あろうとも、年月を経た一枚のアンティークポストカードの魅力には敵わないと思うのである。
そんな訳で、つい最近入手したカードはEbnerを知り始めた頃好きだった絵柄で、私にとっては初心に帰ったような感じである。
スノーマンも低価格で入手できて嬉しかったのだが、こちらは更に驚くほどの安値であった。
カード全体の色は黄色が進んでいる印象だが、絵柄部分の発色はとても良い。
印刷も鮮明で汚れも全く見当たらない。
綺麗におめかしした子供とその手にあるフラワーアレンジメント、白いクロスのかけられたテーブルの上には美味しそうなクグロフ、誰かに贈られるプレゼントの包み、花瓶のお花。
作風を変えながらも、繰り返し描かれてきたお呼ばれする子供達の情景で、Ebnerが好んで取り入れたアイテムが花束とプレゼントの箱、そしてベイクドケーキの3点である。
Ebnerの作品では、こういった脇役が大きな存在感を出していることが多い。
年少の子の面倒を見る年長の子、大忙しにスイーツを作る子供の天使達、人形の従者達に祝福され結婚式を挙げる子供のカップル、生き生きと手際よく接客をする子供の店員達、雪景色の中をクリスマスギフトを届け歩く子供達、聖夜に天から降りて来て家々を訪問する子供の天使達………
Ebnerの描いた、平安な時を生きる子供達……
私がEbnerを愛する理由が、そこにあるのだと思う。